2013年9月10日(火) 晴れ時々曇り

岩篭山の次に向かったのは、1.5kmほど敦賀方面に戻ったところにあるJR北陸線新疋田駅(しんひきだ)。
現在はこの新疋田駅と滋賀県側の近江塩津駅の間にそびえる県境の山々を、深坂トンネル(5170m・昭和32年開通)が貫いているが、いにしえの時代にはここを越える古道があった。

深坂古道(塩津越え)
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律令期に開かれた主要官道で、日本海と琵琶湖を結ぶ最短経路として多くの人や物資がこの道を行き来したとされる。
実はこの深坂古道、山歩きを始めた一昨年に白山登山のステップアップの1つとして検討していたのだが、他の山に登るのが忙しく、いつしか機会を逸してしまった。
13:52 JR新疋田駅(標高約96m)
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ログハウス調の片流れ屋根の駅舎(無人駅)は2006(平成18)年に新調された。
個人的には以前の駅舎の方が味があって良かったのだが。
ここの駐車場を利用させていただく。

新疋田から深坂古道で深坂峠を越えて、滋賀県の沓掛に降り、近江塩津駅へ。
そこから電車で新疋田に戻ってくるのが今回のプラン(9.7km)。

ザックの水が心許ないので、駅で500mlのペットボトルを補充し、出発(13:55)

まずはR161に出て50mほど北上。追分集落入口へ。
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”追分”とは道が複数に分かれる場所のことで、左がこれから進む深坂古道へと続く。
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右はかつて”七里半越え”とも呼ばれた西近江路(海津越え)で、現在はR161になっている。

バス停の看板にはメーテルやキャプテンハーロックのイラストが。
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敦賀は古くから水陸交通の要衝として栄えたことから、銀河鉄道999に因み松本零士関連のモニュメントが多い。

集落を歩いていると、建築中の住宅の職人さんから「これから深坂古道を越えるの?」と尋ねられ、
「そうです」と答えると呆れられた(笑)

笙ノ川(しょうのかわ)の支流、五位川の手前にある標識に従い左折し、林道へ。
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14:09 深坂古道入口(追分側)(標高約118m)
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ここから深坂峠(標高約364m)までは1.8km、標高差約246m。
塩津海道の難所とされた深坂峠だが、数字上からみると文殊山(365m)に登るより全然楽なハズ。

まずは林道のように道幅の広い道を緩やかに登っていく。
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前回歩いた木ノ芽古道同様、中部北陸自然歩道に指定されている。
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味のある残り距離表示板。
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でもこの先ほとんど見かけなかった。

ここも所々路面の岩に苔が生していたが、下草がキチンと刈られており、歩くには全く支障なし。
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木ノ芽古道同様沢沿いを通っており、マイナスイオンと森林浴の2つが同時に楽しめる。
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沢を7~8回渡渉するが、このような木橋がかかっている。
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14:30 紫式部歌碑(紫式部集)
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紫式部(当時20歳ぐらい:諸説あり)は父藤原為時が国司として越前に下向する際に、この深坂古道を通ったとされる。
もっとも自ら歩いたのではなく、輿(こし)に乗っており、その輿を担いだみすぼらしい格好の人夫たちが、
「やはりここは難儀(ツラい)な道だなぁ」と愚痴をこぼしたところ、

「知りぬらむ 行き来にならす塩津山 世にふる道はからきものぞと」
(お前達もわかったでしょう。歩き慣れた塩津山(=深坂峠)同様、世渡りの道も厳しいものなんですよ)

と、自分は輿に乗って男たちに担がせているのに、まさに”上から式部”状態。
きっと小生意気なお姫様だったんでしょうね(笑)

古道沿いには沢の他に湧き水もあり、水場には困らない。
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汗まみれの顔を洗い、乾いた喉を潤す。冷たくて美味しかった。

古道は沢筋を外れ、斜面に取り付いていく。
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汗の臭いに釣られてだろうか、この辺りからブヨが纏わりついて、服の上から背中や足を刺してくる。
ええい、寄るんじゃない!

深く掘れた切り通し。往時は多くの人馬がここを通ったのだろう。
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追分から沓掛までの馬1頭分の荷物運搬の駄賃(運送料)は、米1斗6升だったとされる。
そんな深坂古道も16世紀後期に西村孫兵衛によって塩津街道(新道野越え)が開かれると、物流の主流が移ってしまい次第に廃れて明治11年頃に廃道になってしまった。

所々にベンチも設置されており、非常に良く整備されている。
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14:50 峠まで400m地点
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笠朝臣金村歌碑(かさのあそみかなむら)(万葉集)
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笠金村は奈良時代の歌人で、越前守。

「塩津山 打ち越え行けば 我が乗れる 馬ぞつまづく 家恋ふらしも」
(塩津山を越えていくと、私が乗っている馬がつまづいた。きっと家人が私を思っているのだろう)

14:58 深坂峠(標高約364m)
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古道入口から49分。急登な箇所は全くなく、木ノ芽古道より緩やかでチョッと拍子抜け。
例えるなら、文殊山の七曲から小文殊間の緩やかな道が延々続いているといった感じだった。

でも太平洋側と日本海側を分けるれっきとした中央分水嶺である。
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峠の両側の尾根には道が続いており、上部には南北朝や戦国時代の山城跡があるようなので少し登ってみたが、最近はほとんど人通りがないのか、藪が煩さいのですぐに引き返す。

峠に戻り、近江側へ降りていく(15:07)
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2分ほど進むと道が2手に分かれる。
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真っ直ぐ行くと林道で、左は中部北陸自然歩道の標識が矢印を示している。
ということは左が深坂古道なのかと進んでいくが、これが大失敗
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道がえらく荒れており、倒木や切り株が多く歩きづらい。
想像するに、自然歩道として整備された後、メンテナンスもなく長らく放置。その後生えた潅木や雑草を刈ったみたいだが、またもしばらく放置されているような感じだった。
なおこの先の深坂地蔵には林道経由でも行ける様なので、林道を通った方がイイと思います。

15:13 深坂地蔵(掘止地蔵)(標高約315m)
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ここでようやく小休止。ここには地蔵堂のほか、休憩所やトイレ、水場もある。

堂内には平清盛ゆかりのお地蔵様が祀られている。
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深坂地蔵のいわれ
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説明によると、平安末期に清盛の嫡男で越前国司だった平重盛が、琵琶湖と日本海を結ぶ運河を切り開く命を受けこの地を試掘したところ、大きな岩に突き当たる。
石工が金矢でこの大岩を打ち砕こうと穴を開けると、突然原因不明の腹痛に襲われ、別の石工が同じ様に試みるが、またしても腹痛に襲われる。
そこでこの岩を掘り起こしてみると、その岩は立派なお地蔵様だった。
「これはただ事じゃない」と運河計画は中止になり、この地にそのお地蔵様を安置したと伝えられており、別名、”堀止地蔵”とも呼ばれる。

その後も昭和の時代まで何度も運河掘削の計画が持ち上がるが、技術的・財政的難題が多く、結局運河は開かれなかった。

まだブヨがうるさいので、早々に深坂地蔵を後にする(15:18)
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ここからは真っ直ぐ伸びた林道のような道が続く。ただ所々段差があるので、林道ではないようだ。

道中にあったケルン? それとも墓?
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なぜか布袋様の焼き物も。
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♪ベビベビ ベイビィ その布袋じゃありません(笑)

深坂地蔵から10分ほど進むと、またしても2手に分かれる。
右は大川沿いを下っており、左は少し登っている。

多分右が本来の深坂古道のようだが、様子見で左の方に登ってみると突然視界開ける。
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どうやらここは山砂の採取場のようだ。
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ちょうどこの真下辺りを深坂トンネルが通っている。
車の走行音も聞こえてきたので、R8に続いているのだろうと進んでみる。

越えてきた深坂峠を振り返る。
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前方にR8(塩津街道)が見えてきた。
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15:35 深坂古道入口(沓掛側)(標高約253m)
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ここから近江塩津駅までは5.2km。事前に調べたダイヤでは、次の電車は16:01発。
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下り坂だがさすがに25分で5.2kmは厳しく、その次の電車だと17:10まで待たないとならない。

ここには湖国バスの近江鶴ケ丘バス停もあるが、次のバスが来るのは16:08。
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これなら歩いても一緒になってしまう。

一方、このままR8を新疋田まで歩いていくと約7km。
こちらも下り坂で、ちんたら歩いても1時間半ぐらいで着きそう。 う~ん。。。

迷った末、計画を変更しR8で新疋田まで歩いていくことにする。

15:39 福井・滋賀県境(標高約257m)
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県境から100mほど進むと、茅葺の入母屋屋根の古民家が見えてくる。
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15:41 民芸茶屋 孫兵衛
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秀吉の命で新道野越え(現在のR8)を開いた西村孫兵衛の名を冠するこのお店は、まさにその孫兵衛の御子孫が経営されていて、10年ほど前に一度来たことがある。

これから長丁場の歩きだし、小腹も空いてきたので立ち寄ることに。
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こっちのコースを選んだのは、本当はこの店に寄りたかったことの方が大きいかも(笑)

孫兵衛はおそばやうどんなどの麺類の他に、丼物や定食類もあるが、
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一押しはなんと言っても、とろろそば(850円)。もちろん大盛(+220円)で注文する(笑)

店内の一画には孫兵衛ゆかりの品々が展示されている。
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一番左にあるのは西村家に伝わる「奥の細道」の原本の1つ「素龍清書本」(展示してあるのは写本)。
なんでも表題は芭蕉の自筆らしい。スゴイ!

とろろそば(850円)
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なおとろろそばは温かく、冷たいのをご希望ならざるとろろ(950円)。

自然薯をおろしたとろろがたっぷりかかっており、玉子が1個落としてある。
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もちろんお蕎麦も県内産の手打ち蕎麦で、コシがある。

大盛は意外とボリュームがあり、普通盛にすれば良かったかもと思ったが、難無く完食(笑)
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ごちそうさまでした。

お店の前はバス停(新道野)になっており、始発のバスが停車していた。

(やっぱりバスで近江塩津まで行き、電車で戻ろうかな?)

でもメインの財布を車に置いてきたので、小銭入れの中には残り150円しかなく、これじゃバス(300円)はおろか、電車(190円)にも乗れない。

やはり歩くしかないんだよな。。。(16:07)
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よし、電車と新疋田(17:17)まで競争だ(笑)

車やバイクでは数え切れないほど通っているこの道(R8)も、歩くのはもちろん初めて。
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横をトラックがビュンビュン通り過ぎていく。ヒッチハイクしようかな?(笑)

16:45 刀根(県道140)分岐
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右手の道はかつて”刀根越え”と呼ばれた古道で、昭和39(1964)年に柳ヶ瀬線が廃止されるまではここを北陸線(単線)が走っていた。なお鉄道時代の柳ヶ瀬トンネル(1352m)は、現在も道路(交互通行)として使われている。機会があれば久々坂峠(標高約400m)を越えて、この古道も歩いてみたい。

16:54 曽々木バス停
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新疋田はまだか~

17:09 奥野バス停
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日がだいぶ傾いてきた。

ようやく疋田に入るが、無情にも前方を敦賀行きの電車が通り過ぎていく(17:17)
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くそ~ 負けてしまったか。。。(笑)

R8(塩津街道)とR161(西近江路)が交わるこの辺りは愛発(あらち)地区と呼ばれ、
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律令期に愛発関(あらちのせき)が設置された。東海道の鈴鹿関、東山道の不破関とともに三関とされ、恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱の際は、関が閉じられ都を守った。

ようやくR161に合流(17:23)
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新疋田駅まではあと400mほど。現在隘路の北陸線のガードは、隣に新しいガードが建設中。

17:32 JR新疋田駅(標高約96m)
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新道野から1時間25分。下りとはいえ、やはり7kmは長かった。

清盛が夢見た運河は実現には至らなかったが、孫兵衛の尽力や鉄道の普及で、今は人の移動や物流もアッと言う間に大量に運べるようになった。
でも時にはゆっくりといにしえの道を歩くのもいいかも。

深坂峠(364m)(登り:深坂古道 下り:新道(R8))
標高差246m
登り 49分、下り 1時間59分、TOTAL 3時間40分

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